近年の障害者数は、2006年〜2018年まで約280万人増加
高齢化と障害者への理解(言語化)が広がり、福祉サービス利用が広まった結果という理由もあるが、働きにくい人=障害者となった近代以降において、産業構造の変化とコミュニケーション偏重の世の中において不器用な人達が障害者とならざるを得ないのではないか!!と主張している動画です。(さ)
・坂根匡宣 https://dialogs.jp/pro-sakane/
(一般社団法人ダイアロゴス代表 社会福祉士・公認心理師)
・大門さん
(ギフテッドスタイルアルバイト、高学歴だけども不器用で超お人好し、現在社会福祉士を目指して勉強中の学生さん)
#障害者数 #ギフテッド #産業構造の変化
ギフテッドスタイル代表の坂根匡宣氏がアルバイトの大門博氏を呼び出して、障害者数の増加について語った。近年の障害者数は、2006年?2018年まで約280万人増加している。高齢化と障害者への理解(言語化)が広がり、福祉サービス利用が広まった結果という理由もあるが、坂根氏の視点は、もっと根本的なところにある。働きにくい人=障害者となった近代以降、産業構造の変化とコミュニケーション偏重の世の中になった結果、「不器用な人達」が「障害者」とならざるを得ないのではないか、と坂根氏は主張する。以下は、その概要である。
S)坂根匡宣(一般社団法人ダイアロゴス代表 社会福祉士・公認心理師)
A)大門博(ギフテッドスタイルアルバイト、高学歴だけども不器用で超お人好し、現在社会福祉士を目指して勉強中の学生さん)
S)ギフテッドスタイルの坂根です。今日は、ギフテッドスタイルにアルバイトできている大門さんに来て頂きました。
大門さんは元々塾講師をされており、今は社会福祉士の勉強をしている学生さんです。こちらでアルバイトをしながら勉強されているんですけど、この動画にも無理やり出てもらって今日はお話したいなと思っています。
今日のテーマは、ギフテッドといずれ関係してくるであろう障害者数のお話です。最近、障害者数が非常に増えており、その理由について二人でお話したいなと思っています。
2006年の障害者数は665万人で、2018年は280万人増加して936万人。2018年は2年前なので、今はさらに増えていると思いますが、その原因についてお話したいなと思います。大門さん、なぜ障害者数が増加しているんですかね?
0)まず障害についての知識が世間に浸透したからだと思います。やはり自分の障害、子供の障害、家族の障害がいったい何なのだろうと考えたときに、普及している障害概念から理解しようとなります。身体障害者に関しては、昔は交通事故で亡くなってしまうような人が、医学の進歩で救えている(助かった結果、身体障害者として生きる)要因もあると思います。私の息子が今小学生なんですけど、仲良し学級、通常クラスの両方に所属しているような通級の子が40人のうちに2人3人います。昔よりはるかに人数比率が増加しているのではないかと思います。
S)子供の障害者数が増えているということですね。障害を持ち支援が必要な子供のために、特別支援学級と通級というものがあります。特別支援学級数は増加傾向にあり、特別支援学級と普通の教室を併用しながら勉強をしているという子が増えてきているということですが、それは障害者が増加しているという意味ですよね?
O)そうだと思います。
S)なぜ増えているのですか?
O)おそらく規定は教育基本法などにあると思うんですが、福祉教育として、いろんな生徒と触れ合うようにしようという施策があるためではないかなと思います。
S)教育の制度が変わったから増えたということですかね?
O)はい
S)学校基本法改正の際、明らかに課題のある子供が何パーセントぐらいいますか?というアンケートを学校の先生に取ると、6パーセントぐらいでした。そこで支援対策をする必要があるということで、特別支援教育のあり方も少し見直されました。今まで問題はあるものの普通教育で学んでいたが、丁寧に特別なニーズに合わせた教育が必要になったというのがあるのでしょうか?
O)そう思います。
S)それが一般的な考えかと思うのですが、僕はちょっと違います。それももちろんあるのですが、少し整理すると、おそらく障害者数増加の理由は、別にエビデンスがあるわけでもなんでもないんですが幾つか考えられおり、まずは高齢化の問題があります。高齢化に伴って身体障害の発症年齢が高くなり、障害者数も増加します。脳卒中で半麻痺になったり、高次脳機能障害といった脳の機能障害による精神障害により、障害者数が増加する。
そして大門さんも指摘されていましたが、障害者の認識のされ方が少し変わってきた。知られるようになってきた。発達障害など、障害というものがきちんと知られるようになってきた。昔は発達障害という障害はなかったので、言葉そのものが増えてきたということも要因としてあるかなと思います。
さらに福祉制度もだいぶ利用しやすいように変更され、行政の方から「しんどかったらこういう制度利用しなさい」と言われていた体制から、福祉サービスを選んで契約して自ら使うというふうになったので、それに伴って「障害者になるだなんて…」といったスティグマが減り、否定的な環境も少しずつ薄れてきて「制度で支援を受けれるのなら障害者手帳を取ろうか」となってきました。
以上が一般的に言われている要因かなと思いますが、僕の見解はそれだけではないんです。障害というのは、やっぱり働きにくさや社会に不適応だから「障害」というふうにつけられるわけで、社会の受け入れが悪くなったと思うんです。障害はなく普通に暮らせていたが、社会の変化に伴って「障害者」にならざるを得なかったのではないかと思われます。
成人期の障害者の増加はその証左ではないかと類推されます。例えば知的障害は、2006年から2018年まで108万人増加していますが、成人の増加が多い。ということは子供のころには療育手帳を取らず、成人になってから改めて手帳を取られる方がいて、それはおそらく知的障害があっても生活できていたが、最近になって生活ができなくなってきた。だから手帳を取らざるを得なくなってきたりもするのではないか、と思われます。
最近、僕がよく例に出すのが、ファーストフードの牛丼屋さんです。牛丼屋さんを見るとすごい状態になっており、昔は少しコミュニケーションに不器用な人は皿洗いや厨房に入るなど、レジ打ちの人と分業をしていました。現在は、牛丼屋さんに行くと一人でやってる。皿洗いからレジ打ちから調理から接客まで。一人の人間で多様な能力を要求されるような時代になってくると、不器用な人が仕事を失ってゆきます。最近は高度なコミュニケーションが要求されるので、コミュニケーションが不器用な人がどんどんと障害という形であぶり出されてくる。
発達障害のため不器用さを持つ人などは、こういう社会の中で二次障害を背負う。鬱になったり、不安が強くなったりするとより一層働けなくなり、悪循環になって手帳を取らざる得なくなり、障害者数が増えてくる。就労環境がどんどん悪化してるからこそ増えてるんじゃないかなと思います。
そして言葉も増えてゆきます。HSPやギフテッドなど、この動画の中でも少し普及させようと思ってますけども、新たな言葉が作り出されて、ギフテッドの生活の生きづらさがある意味ネガティブな側面としてフォーカスされて普及してゆく。言葉の普及は、いい面と悪い面があると思います。名づけができるから助けてもらえるという側面もあるけど、そこに自らの逃げ場所を作らざる得なくなっているといったことがあるのではないか。また僕一人でしゃべってしまいましたけどどうでしょう?
O)言葉化というのではパワハラ、セクハラって確実に昭和の時代にはなかったと思うんですね。その言葉があることでパワハラやセクハラの認識が広がっていった。
S)そうですね。あれも難しいですね。パワハラ、セクハラ、ハラスメント問題も言葉ができることによって問題が少なくなって生きやすくなってくる。しかし物事には反作用があり、すごくコミュニケーションが取りづらくなってきたり、より一層高度なコミュニケーションが要求されるようになってくるということになるので、今後ますますコミュニケーションの課題が大きくなってくると懸念されます。
そもそもですね、今日もう一点お話したかったのが、なぜこんなコミュニケーションが要求されるのか。人間はコミュニケーション上手なのになぜこんなに苦しむのか。それも仕事の場面で。何でここまで苦しむのかなっていうお話なんですが…。
もともと産業構造は、第一次産業(農業・漁業・林業)から第二次産業(製造業)そして第三次産業、(サービス業)と1・2・3と表されますが、1951年頃の統計ではだいたい第一次産業に従事されている方が46パーセントで、ほぼ半分ぐらいが農業、漁業、林業だったんですね。それが産業構造の変化により第三次産業が進み、今は第一産業は3.3%で、ほとんどなくなっている。ということは農業、漁業、林業は、コミュニケーション能力がいらないわけじゃないんですが、高度なコミュニケーション能力は必要ではない。コミュニケーション能力が一番要求されるのは、サービス業種です。
人間は第一産業で数千年暮らしてきたので、その身体感覚が根底にある。それがこの50年ぐらいでサービス業化してくることで、身体感覚が違和感を覚え、やっぱりしんどい人たちがたくさん出てくるのではないか。だから最近の障害は発達障害と精神障害が増加し、この動画でもやっていますように「敏感な人」などやたらとしんどくなってきてしまう人が増加しています。
今後ますます怖いのが、AI導入によるサービス業種の減少です。サービス業の中でAIにより自動化がもっと進んできてしまうと、簡単な事務作業も自動化される。作業が自動化されていくと、サービス業種の中でも不器用なコミュニケーション能力の方々はさらに排除されていく世の中になる。そしてサービス業種からあぶり出されてきてしまった方々が新たに「障害」と名づけられてしまって動揺する可能性がある。
ひょっとしたらHSPなども特別な支援が必要だ、といったことになり障害者と同じよういな扱いになってくる可能性もないわけではないかなと、勝手な言い方してますけど、思っていたりします。まずそのようなコミュニケーションに不器用な人たちが社会にインクルージョンされていく世の中になっていってほしいと願っています。
O)話が少し飛ぶかも知れないですけど、何で知的障害の大人の人が増えているのか、分からないなと思っていたんですけど、今のお話でHSPといったものが障害になるかも知れないというのは、大人になっても自分のこととして思い当たることなのではないのかなと。自分はHSPだというところはどうオープンにするかはさておき、障害者というくくりの方に持っていく可能性はすごいある。知的障害と精神障害の両者を持っている方は一人一人のことなので分からないですけど。
S)知的障害者の判定の仕方ですが、基本はIQです。厚生労働省通知によるとIQ70以下が知的障害児。子供の頃は、知能指数=精神年齢(MA)/生活年齢(CA)×100という式で計算します。例えば14歳で知的能力が10歳ぐらいだと、知的障害とするといった判別をします。成人期になると生活年齢分の精神年齢というIQの測り方ではなくて、偏差値になります。ウェクスラー成人知能検査(WAIS)などで測定します。偏差値で考えたとき、IQ70以下は、人口の2パーセントぐらい。70以下で区切りのなら、総人口の2パーセントは知的障害者のはずなので、1億2千万人いるとすると、240万人が知的障害者になります。
O)正規分布では上の人もそれぐらいですか?
S)正規分布でIQ130になる人は2パーセントぐらいで240万人ほどです。現に今、知的障害は180万人ですが、知的障害のある可能性のある人が200万人ほどいるということです。ただ、では知的障害者としてで暮らさないといけないのかというと、そうではない。知的障害にあたる水準の知的能力であっても、社会の労働環境さえ整っていれば手帳を取らずに済んだ。昔も知的障害者が少ない時代は、国際的な基準では10倍ぐらいいてるよということが言われていました。潜在的にいるということです。なぜ増加したのかというと、さきほど述べましたように、社会の方が受け入れがよくなったりスティグマが低下してきたから、ということもいえると思いますが、僕なんかが見てると必要に迫られて手帳を取ってる人もいてる。今まで生きてきた環境が変化して手帳を取らざるを得なくなってきた人が増えてるのではないか、というのが現場の感覚です。エビデンスのないお話してるんですけど、そういうようなことかなと思うので、世の中が受け入れがよくなるようにしていきたい。
そして基本はやはり働き方です。働き方をしっかりとサポートしていくというのが大事かなというふうに思います。さらに今後、さっきも言ったようにギフテッドやHSPといった方々もまた暮らしにくくなってくる可能性も秘めているので、しっかりここで働く場所みたいなものを作っていってやっていけたらなというふうに思っています。では、今日はこの辺で終わりたいと思います。